ずっとずっと昔の未来の話。
大洪水から数百年後の世界。
ここは、戦国時代の日本のような場所でした。
まだ、サムライがいた時代。
国中で起こった戦の混乱もいまだ覚めやらぬ時代。
山賊、人斬り、ならず者の跋扈する暗黒時代――。

妖怪ミツメの住む森に、キノコという名の少女と
彼女を守る人狼が逃げ込んできました。
彼らはずっと追われて生きてきました。
なぜなら、女の子には、人を不老不死にする力があったのです。
彼女とキスをすれば、不老不死になれるのでした。

でも、それは一度きり。

たった一人の人を不死身にすることしか出来ないのです。
なぜなら、ひとたびキスをしてしまうと、
彼女は死んでしまうのです。
彼女には守護者がいました。名前をヨサク。
今日も、二人は森を逃げていました――。
それを追うは、人斬り、虚無僧、抜忍者。

果たしてキノコとヨサクは逃げ切れるのか?
キノコは、誰かに不老不死の力を与えることになるのか?
すべては、意外な結末へと向かっていくのでした。

ミツメ あのね、僕はミツメ。目が三つあるの。ほら。
このお話は、恋物語。
僕は途中で死んじゃうの。
みんなみんな、死んじゃうの。
でも、とっても楽しかったんだ。
あのね、木の股から生まれた子供がいたの。
その子を守る、狼男がいたの。
僕らは、出会って、別れたの。
そんなお話、このお話。そんな一夜の恋物語…

(写真はエジンバラ演劇祭の初演時の写真:photo by 伊東和則)